親切にしてもらったことの対価にお金を支払いたくなり、値切ったことを後悔する、バカだ・・・。 インドネシア、バリ

30 日

 狭い部屋に4 人家族で泊まってるから、体温だけで部屋の温度が上が
る。

 熱気がこもる。

 朝、ドアを開けると冷たい新しい空気と、鮮やかな空の色、真っ赤な
花の色が飛び込んでくる。

 路地からビーチまで散歩してると、宿のおっさんに出会う。

「宿に戻るの?乗ってきなよ」と。

この鷹揚さがアジアの国々にあって、日本の国にないところ。

 帰りはバイクの後ろに乗せてもらう。当然ノーヘル。

 プールを眺めながら、部屋の前の椅子に座り、これから道のりに想い
を巡らす。

 バリ島クタ地区に4 泊。そろそろ移動しよっかな。。。

 息子と朝食。

彼はパンケーキを食べた後、日本から持ってきた計算ドリルをやっている。

 こんなところにまで来て、宿題をやらなくてもいいのに…と思うが、
中国雲南から国際電話で「アジアのどこかで会おうよ」と誘っても「朝
のラジオ体操があるからいいよ」と断ってきた、真面目がランドセルを
背負ったような男だ。

 宿のおっさんに明朝、ウブドゥまで行くことを告げる。

 砂浜をみんなで散歩して、ヘナで染めるタトゥを入れる。

 陰陽の文様を選ぶ。

 息子はイルカのタトゥ。

ビーチで出会ったアリさんという男がヤシの葉で風車を作ってくれた。

 空は、まるで空気がないように清んで、遠く青い。


 31 日

 天井のファンを止め、電灯を消した途端に蚊の猛攻撃を受ける。

タイガーバームを買っておいてよかった。

今日はウブドに移動する。

 アリの話によると途中、いろんなところに寄り道すると必ずコミッ
ションを取られるからダイレクトに行った方がいいと。

 Price ってなんだろう?

損とか得とかってなんだろう?+とか−って?

イカンバカールでの家族での食事は、予想外の出費だった。

この数ヶ月の旅の中ではイチバンの豪華な食事やな。

タクシーのドライバーにも、ホテルにもかなりのペイバックがあった
はずだ。

でも、家族でビーチで過ごす時間はすげー感動だった。

ちょうど夕日の時間に連れて行ってくれて、行き帰りとも宿の玄関ま
で。

 便利さと情報にお金を払ったわけやね。

今、朝の4時、傍らに嫁と子供2人が好き好きな方向を向いて寝てる。

 みんなどんな夢を見てるのかなぁ

11 時にクタを出て1時間、ウブドのファミリーGHに着く。

ジャングルみたいな庭の中にある。

子供たちは裸足で駆け回っている。

近所の店で紙に包んだナシチャンプルを3つ買ってきて、手で食べる。

 すごい静か。

 ニワトリや虫の声。

 頼めば、お茶も持って来てくれる。

 夜はケチャダンスを観に行く。

 舞台の右上にデッカイ満月が。

 今夜はフルムーンらしい。

 火と汗と月と。

 楽器なしの声だけのリズム。

浮かび上がる褐色の肌の男たち。

かがり火に集まる人。

 素手で火を掴む男。

 フルムーンのケチャダンス。


 8 月1 日

 パフィーの『アジアの純真』がずっと頭の中に流れている。

夜は寒い。

南半球だもんね。

 夜中に目が醒めて、本を読む。室井滋『むかつくぜ』

 なんでもない日常の中にトンデモない面白さを見つけることができる
人なんだなぁ。

 どうでもいいけど、みつあみにした頭が痒くて痒くて・・・。

 AM、ジョニーの車に乗ってバロンダンスを見に行く。


ガムランの音。

 子供たちとモンキーフォレストを歩く。

 マーケットに行き、ナシチャンプルをテイクアウト。

タクシーで宿に戻る。

 ドライバーの言い値は、5万ルピアだが交渉で1万ルピアになる。

 プライスとは何だ?

3歳の娘は疲れて、車中で眠ってしまう。

ドライバーが抱きかかえて降ろしてくれた。

 2万ルピアでもよかったかなぁ。

親切にしてもらったことの対価にお金を支払いたくなり、値切ったことを後悔する、バカだ・・・。

 宿の女の子が電話してくれて、次の目的地ロビナの宿の予約をしてく
れた。

ディスカウントの交渉までしてくれた。

部屋で本を読む。

 「コンバンワ」の声がした。

 ジョニーが友達とやってきた。

今日の運賃とガイド料を請求しに来たのだが、自分では言い出せずに
友達を連れてきた。

 金額を尋ねても UP TO YOU としか言ってくれない。

 言わない、言えない、言い出せない。

5万ルピーを渡した。

 適正な価格かどうかは分からないが、感謝の気持ちだ。

家族4人でベッドの上、トランプをして、眠る。

 TVもラジオもない夜。

 外で虫の声。