悲しみに捧ぐ歌

友人の詩を転載します。




以下、転載。









悲しみに捧ぐ歌 ― 喪失と再生の只中をともに生きるひとたちへ ―








あの日 世界が変わった


信じていたものは消え 立っていた地平が揺らぐ


砂塵の覆いつくす この胸の


熱い痛みとむなしさ


君の前に立ち


平気な顔で笑ってみせても



悲しくて 悔しくて 寂しくて 苦しくて




泣いてください


いま側にいてくれる君よ



君の涙と 僕の涙


僕の涙と 君の涙



きっと 涙はあったかい




うしろ姿見送る夕暮れ


ふと空をふと見上げたら



いいんだよってささやいた




今日 生きてみようか





世界が変わったその日から


時は昨日に走り 伸ばした手が掴むのは幻影


がらんどうに響くのは


長く尾を引く 葬送の歌

君の前に立ち


切なさを堪え元気にみせても



悲しくて 悔しくて 寂しくて 苦しくて




泣かせてください


いま側にいてくれる君よ


僕の涙と 君の涙


君の涙と 僕の涙



きっと 涙はあったかい




シンと鎮まるひとり夜


残った涙を落とせば



いいんだよってささやいた



今日 生きてみようか






僕は祈る


大切な想い出を抱いて




今日 生きてみようと




僕は祈る 涙を捧げ


ともに痛み 問い続ける


君のいる



今日を生きる





まだ見えない希望と握手するために








震災後、ひと月ちょっと立った明け方、ふと目が覚め、言葉が浮かんできた。


今もまだ、たくさんの行方不明の方々と、その帰りを待っている家族の方がおられる。また、家族を周りの人を助けられなかったことに苦しまれている方もたくさんあると聞く。そして、支援の手も届かず、明日を生きる手立てを失いつつある方も。


そのようなか方々に、ゆっくりと涙が流せる場所が与えられますように。話を聞いてくれる誰かが与えられますように。そして、神などいないと叫ぶしかないような、そんな悲しみの中にある方々に、祈りが届きますように。


同じ存在としてそこに立つ「僕」と「君」。


それは、わたしでありあなたでもある。