「バナナ買う、バナナ買う、バナナ買う」
あの町、今もあのリキシャは走っているだろうか?
あの川、今も同じように流れているのだろう。
あの国で受けた衝撃は、今も身体の中に疼いている。
今も。
「バナナ買う、バナナ買う、バナナ買う」
宿の前の路上のバナナ売り。
誰も話す人がいなくて、話を聴いてくれたのはバナナ売り。
僕は日本から来たんです。
バナナ買う。
朝から晩まで働いてたんです。
バナナ買う。
朝、仕事に行くときには子供は寝てます。
夜、仕事から帰ったら子供は寝てます。
バナナ買う。
一日中バナナを売る爺さんと、一日中ネクタイを締めて家を売る日本のサラリーマン。
バナナ買う。
あれから16年、結構自由にやってるよ。
旅してたときも、今も。
今も旅してるから。
よし、ちょっと出かけるか。