生きていりゃ、こんなこともあるもんだなぁ。



高齢者施設に入所しておられる86歳のAさん。

毎月アクリルタワシを50個編んでくださる。

50個になったら、車椅子のまま乗れる自動車でお迎えにあがり、その日は一日、好きなところへ行き、好きなものを食べる。

そういう約束をしている。

これまでは、まず家に帰って衣替え。

幾つになっても女性は着る物が好きなのだなぁと思った。

次にお墓参り。山の裾に在る急斜面を登ったところにご主人のお墓はあった。

食べに行ったものは、まずは寿司。それも廻るのではなく、カウンターで握ってもらう寿司。

上にぎりを食べ終わった後に、躊躇しながら言われたこと。

「なまこを注文してもいいですか?」

もちろん!!

息子さんやご主人さんもなまこが好きだったらしい。

住んでおられた家は山間部なのに、好きなものは「なまこ」

施設では永遠に食べられないナマモノだ。

50個のアクリルタワシと交換にして、ちゃんぽん、唐揚げ、刺身・・・と続いた。

今月は、遠方にお嫁に行った娘さんが帰って来られるタイミングで一緒にホテルのランチをしましょうという趣向。

一方、90歳のNさんは、時々和紙にしたためた随想を届けてくれる男性だ。

彼から電話があったときに、これは面白いと思った。

3人でランチよりも、4人の方が楽しそう。

テーブルに並んだ形もいい。

今、Nさんが住んでおられるところと、かつてAさんが住んでおられたところは川を挟んだ向かい側にある。

共通の知人もいるって話にでもなるかもしれない。

そう思ってのことだった。

ランチ当日、施設にAさんと娘さん(・・・といっても60代)を迎えに行き、湯田温泉セントコア山口へ。

ちょうどいいタイミングでNさんも来られた。

前菜の来る始めのうちは、言葉のジャブの応酬。


メインの鶏肉の中盤では、共通の知人がいることが分かり、場が一気に和んだ。

まぁまぁ、世の中は狭いですねぇ。

食事が終わり、デザートを食べている。

コーヒーを飲み、ほっとする辺りでAさんが、

「私は終戦の玉音放送は○○町の○○の倉庫の中でした」と。

するとNさんも、

「終戦後、私もそこで働いていました。あなた、旧姓は?」

「Yです」

「○○のYさんでしょう!あなたが廊下で歩いていたのを憶えていますよ。綺麗な人じゃった!今は少し小さくなられた(笑)」

なんと2人は、戦後のある時期、同じ職場で働いていた同僚だった。

戦後70年の70年ぶりの再会だった。

なんとまぁ、嘘のような本当の話。

それから先はあの人はどうしている、彼はどうなったという話に花が咲いた。

お会計を済ませに行ったキャッシャーの人にもこの話をしてみると、大喜びしてくれた。

その人がまたホール係の人にも話したようで、「今日はいい再会だったのですね」と声を掛けてくれた。

幸せの伝播だ。

LIFE IS BEAUTIFUL.

What a wanderful world !!

こんな場に居合わせることができて幸せだなぁと思いながら、セントコア山口を後にした。


生きていりゃ、こんなこともあるもんだなぁ。


ありがとうございます、Nさん、Aさん、Aさんの娘さん、セントコアの皆さん、そして自分にも、ありがとございます。