卆寿翁は、この手紙をくれながら、『あなたと出会ったことは金鉱を掘り当てたことのようだ』と言ってくれた。

『生きていりゃ、こんなこともあるもんだなぁ』と思った再会に立ち会ったことを一昨日、書いた。

それを読んだ友人が「橋渡し触媒作用」と銘してくれた。

橋を渡して触媒する、本人は全く変わらない。

真に評して、言い得て妙だ。

その70年ぶりの再会のことを当の本人が和紙にしたためて渡してくれたのが、昨日のこと。

僕の目から見たものと、当事者のNさんから見たもの。



以下、書き起こし。

( )内は、付け加えた感想。


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人の巡り会わせと脳の不思議

奇遇というか、奇縁というか、こんなことがあるのだろうかというようなことが今日は起きた。

(誠にそうだ、本当にそう思います)

永く生きているといろいろなことも体験するのも人生ではあるが、今日の体験は私の90年の人生で特筆すべき珍しい出会いである。

ことの起こりは岡村さんが行った湯田温泉ホテルセントコアでの昼食会でのことである。

岡村さんのボランティア活動の一つらしいが、老人ホームで生活しているAさんという老婆(あんたよりは若いっちゅーにww)との昼食会に私が誘われて行ってのこと。

(ボランティアというよりも契約、約束に近い。アクリルタワシ50個と交換条件での一日自由契約なのだ)

平成27年6月18日(木)雨、セントコア山口に午前11時30分に待ち合わせをすることになったが、梅雨の最中、雨は降ったり止んだりの天気。

予定通り、彼は(僕)Aさんという老婆(あなたより年下ww)とその娘さんを伴って現れた。

お互いの住所を照会しあったが、私の以前付き合っていたAさんではなかったが、大体の見当はつき、共通の知り合いもいるとのこと。

話は通じ、会話は続いた。

昼食も終わりに近づき、食後のデザートを食しているとき、私が若い頃、税務署に勤めたことがあると話した途端、Aさんが私も税務署に勤めたことがあると一言。

聞いてみると、彼女は昭和19年に入社したとのこと。

税務署の宿直室で終戦の詔勅を聞いたとのこと。

彼女は終戦当時、H市の税務署に勤めていたのだ。

そこで彼女の旧姓を尋ねると、Yとの返事。

私の頭に浮かんだのはYさんという一人の女性の姿である。

我々は70年ぶりに会ったことになる。

私の思い出せる当時の税務署に勤務していた人たちの名前を言うと彼女の記憶にある人達ののあるようだ。

間違いなく2人は戦後のH市の税務署に勤務していた仲間なのだ。

私は昭和21年に入社しているので、彼女は私の先輩ということになる。

彼女の顔を見ているうちに、私の記憶の彼方にあった昔の仲間の名前が次々と思い出された。

佐田さん、山根さん、吉田さん、星川さん、中島さん、河村さん、倉重さん、永田さん、原田さん、国分さん、吉賀さん、福田さん、兼石さん、貞弘さん、石川さん、宇多田さん、井関さん、原さん、木村さん、井村さん、池田さん、直ぐには名前は浮かばないが、あの人、この人の顔・・・。


「こんなこともあるのだろうか」と岡村さんが言い出した。

全く縁も所縁もない岡村さんの付き合いに我々2人が巡り合うということの不思議。

(全く以ってその通り)

「縁は異なもの」という言葉もある如く、全く予期せぬことが起きたものだ、と同時に私には不思議に思えることがある。

それは人の記憶の不思議。

Yさん(Aさんの旧姓)の顔を見ていると次々と思ったこともない過去の記憶が蘇ってくる不思議。

人間の脳の不思議を体験した一日であった。


卆寿翁


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卆寿翁は、この手紙をくれながら、『あなたと出会ったことは金鉱を掘り当てたことのようだ』と言ってくれた。