まず、自分のバケツを一杯にすること。そしたら、あふれだす。


23 日

 明るくなるまで、彼女の部屋で話をしていた。

何を話したのか、全く記憶がない。

 アツコさんが育てている鉢植が赤い花をつけている。

 外には雷の光。雨粒の流れ。蚊取り線香の臭い。スルメの食べ残し。

マヨネーズの容器。干からびた唐辛子。

 コーランが聴こえてきた。朝だ。

 彼女が貝殻で作った風鈴が素朴な音を奏でる。

 11 時に目覚める。

 散歩しようと庭に出ると日本人の年配の夫婦がいる。

「こんにちわ。こんなところに日本人宿があるんですか?弁慶って看板をみて来ました。」

 早期退職して、ペナン島に移住した山本さん夫妻。

NGOの理事長でネパールの植林にも関わっているとのこと。

 明日の昼食をご一緒する約束をした。

 浜辺を散歩して、また寝る。

暑くて30 分で目覚める。

隣の家では葬式をしている。SGKの看板。日本の新宗教はこんなところでも頑張ってる・・・。

アツコさんに教えてもらったプリックリーヒートを買ってきて、体中に塗る。

汗を吸って涼しくなったような気分になる。


 夕方からまた浜辺を歩く。

高級リゾートホテルまで歩く。

トイレを使わせてもらう。これだけでかなり得した気分。

 イカ焼きを買ってきて、部屋で食う。

 また彼女と話す、延々と。

そしたら他人をなんとかしようとしてる自分が見えた。

余計な世話だよね。

そんなん無理や。SGKで葬式でもしてもらわなきゃ、こんな自分とはサイナラできんな、こりゃ。

南無・・・。


 まず、自分のバケツを一杯にすること。そしたら、あふれてきます。

1999年、インドの片田舎にいるときに自分で自分に言い聞かせた言葉。