想いを現実化させるという成功法則もありだけど、今の現実はかつて自分が強烈に望んだことの結果で、すでに成功しているのかもしれない。




 27日

 いつも7時には目覚める。

 シャワーを浴びようと服を脱いだけど、あまりにも水圧が低いのでや
めて、また服を着る。

 宿に置いてあった誰かの『地球の歩き方 ベトナム』を読む。

 せっかくなので博物館のひとつでも観ておこうかなぁと思う。

 歩いて銀行を探す。手持ちのドルを少しドンに換える。

 ハノイ駅に行って、サイゴン行きの鉄道チケットを買おうとしたが、
手持ちのお金では足りず断念。

ベトナムは鉄道のチケットは物価に比べてかなり高い。

バスのチケットを探すことにしよう。

 一度通りかかったときのみならず、二度目も声を掛けてきたバイクタ
クシーのモーターバイクのドライバーとビールを飲む。

どこの国のどこの町でもローカルとどう関わるかがその場を楽しむコツだ。

 戦争博物館、公園、牢獄などを一日周るツアーを組む。

 政治犯や活動家が監禁され、処刑されたところ。

 そんなヘヴィな場が観光地になる。

不思議なものだ。

昔の誰かが拷問されたり監禁されたりした場所が観光資源になってしまう。

 ホアロー収容所はかつてベトナムを植民地支配していたフランスに
よって建てられ、当時は主にベトナム人が収容され、ベトナム戦争が始
まると北ベトナムに 捕らえられたアメリカ軍の捕虜が収容されるようになった場。

 環境は劣悪で、たいして広くもない牢獄に何千人も詰め込まれていた
ことがあるようだ。

 そんな場もいまはハノイでも有数の観光スポットで、世界中から集
まった観光客や学生が楽しそうに記念写真を撮っている。

 実際に使われてたギロチンの展示なんぞあったりする。

 かなり気分が下がり、やっぱり観光なんてするんじゃなかったわぁと
宿に戻る。


 80万ドンの約束で一日ツアーだったのに、100万ドンを請求され
て、さらに気持ちが下がる。

 笑顔と80万ドンを渡して、お引取り願う。

 そもそも80万ドンも破格の大盤振る舞いなのになぁ。。。

温室と化した部屋に戻ると、雨が降り始めた。

だんだんと豪雨になる。

 いいタイミングで帰ってきた。

 屋根と壁の間から雨が入ってくる(笑)

なんとステキな5ドルの部屋だ。暑い上に雨漏りまで用意されている。

 2万ドンで焼きソバとビールを。

 宿の従業員たちにビールを差し入れると、みんな喜んでくれた。

 レセプションに腰掛け、オーナーと話し込む。

 「ベトナム、どうよ?」

「まぁまぁやねぇ。全然人は信用できんわ。やっぱアメリカに勝った国は強いわなぁ。」

大笑いされる。ベトナム人にもそれは思い当たるらしい。

 今度、一緒に晩メシでも食おうということになる。

 ビールのお返しにと、ベトナムウォッカをもらう。

 日記帳の裏表紙に部屋の扇風機の下手な絵を描いて、夜を過ごす。

 バイクタクシーの後ろに跨り、街を走った今日。

 信号待ちの交差点で目が合った彼女。

 屋台でフォーを売るおばさん。

 飴売りのおじさん。

 彼ら彼女らの目から見る世界はどんなもんだろう?

 どんな家に住んでるんだろう?

家族とはうまくいってるの?

 調子はどうだい?何を願って、どんな明日が待ってるの?

 すれ違う一瞬にイマジネーションが膨らむ。

 こっちの人でなく、あっちの人になってみたい。

 ベトナム・・・。

 28日

 なんでか知らんが、起き上がることができない。

 15時までベッドの上、動けない。

 夕方、フラフラと外へ出て、屋台のフォーを食べる。

 ダメだ、アガらんわ。落ちるとこまで落ちるのを待とう。

店に売っているエナジードリンクの全種類を買ってきて、ガブ飲みする。

体に良いのか悪いのか分からないけど。

レッドブル、レッドパンサー、スティング・・・どれかが効くやろ。



 29日

 夜中に起きて、洗濯をした。

 日本で住宅メーカーに勤めていた頃の夢を見た。

スーツを着て出社する。


お客さんに商品説明をする。

測量に出掛ける。

図面を引く。

契約をする。

融資の手続きをする。

工事に引き継ぐ…。

時間が迫る。

問題が起こる。

頭を抱える…。

土下座する。

目が覚めて、あぁ〜夢でよかったと思う。

今はベトナムにいるんだ。

あの時間があったからこそ、この時間もある。

バイクタクシーに乗り、ハノイ名物のブンチャーを食べに行く。

繁盛している店らしく満席に近い。

壁もドアもない路上に面した店で、地元の人でごった返している。

隣に座った初老の男性が、ブンチャーのおいしい食べ方を教えてくれ
た。

ハノイ大学の教授、娘さんは日本に留学していると言う。

片言の日本語で話をしてくれる。

帰りは街を歩く。

やっとこの街の地図が頭の中に描けるようになってきたぞ。

郵便局を見つけて、絵葉書と切手を買う。

道端に座り込み、日本の家族、友達、旅で出会った人たちを思い起こ
しながら、メッセージを綴る。

ホアンキエムの周囲の公園には、花がきれいに植えられ、整備してある。

さすがは社会主義国だね。

ベンチに座って、人々が湖を眺め、何をするとはなしに過ごしている。

ゆっくりとした時間が流れている。

時間が流れていることさえも気が付かないくらいに悠々と。

隣に座ってきたおじいさんが、葉書を覗き込み、ニッコリと微笑みか
けてくる。

なんていい笑顔なんだろう。

なんて優しい笑顔なんだろう。

僕はどんな顔をしてるんだろう。

「暑いですねぇ」 そんな表情と手振りをする。

彼は手にした扇子で、こちらをパタパタと扇ぎ、風を送ってくれた。

 「カムオーン」

唯一知っているベトナム語でお礼を。ありがとうという意味。

夜は、宿のオーナーとその彼女と一緒にチャーカーを食べに行く。

 あっさりしてていい味。

「僕は旅人で何にも知らない。あなたたちが案内してくれなかったら、
この店に来ることなんて出来なかったし、こんなにおいしいものにも出
会えなかった。ありがとう」

 お礼にと思い、食事の支払いをさせてもらった。

驚かれた。

 とても喜んでくれた。

 だからうれしかった。

 喜んでもらうと、うれしい。

 簡単でシンプルだ。



 なんで旅なんてするの?

 知らん、そんなこと。


 なんでお腹がすくの?

 知らん、そんなこと。

 なんで?ってことよりも、お腹がすいてるってことを感じてんで
しょ?

 そっちに素直に♪



 こころのチキンスープより

 年老いた人々や不治の病にたおれた人々にインタビューをしたもの。
 
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 『もう一度人生をやり直せたら』

 もう一度人生をやり直せるならどうしたいかですって?

 今度はたくさんの間違いを犯してもいいわ。

 リラックスしたい。

 のびのびと生きたい。

 もっとおばかさんになりたい。

 まともに考えすぎないようにする。

 チャンスには賭けてみなくちゃ。

 もっと旅行をしたい。

 たくさんの山に登り、あちこちの川で泳いでみるわ。

 好きなだけアイスクリームを食べちゃう。

 身体にいいからって豆ばかりじゃね。

 あれこれ思い悩むより、現実の問題に真っ向から取り組むつもり。

 毎日、毎時間を分別くさく常識的に生きてきたけど

 今までに自分が輝いた瞬間だってあったのよ。

 次の人生ではそんな瞬間がもっとあればいい。

 そしたら、本当の話、ほかには何も望まないわ。

 人生って長く生きればいいってものじゃないのね。

 その日その日を大切に生きるべきなんだわ。

 俺は、温度計や魔法瓶、それにレインコートとパラシュートを

 持たずには、どこにも行けないような用心深い男さ。

 だがな、今度生まれたら

 そんな大荷物はやめて、フラリと旅に出るね。

 もし、生まれ変わることがあれば、春になったらすぐ裸足になって
 冬がくるまで靴なんかはかないわ。

 そして、もっとダンスにでかけたい。

 メリーゴーランドにもうんと乗りたいし。

 デイジーも思いっきりたくさん摘むでしょう
 
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 来世もいいけど、今世も♪

 きっと、今世では『前世でこうしたかった』と願ってたことをやって
るよ、たぶんね♪

想いを現実化させるという成功法則もありだけど、今の現実はかつて自分が強烈に望んだことの結果で、すでに成功しているのかもしれない。

だったら感謝しかないな。

ハノイの暑さでこんなことを思った。