ウソツキ!と言われる。 カットカット村 ハノイまで 北京の京華飯店以来、泊まった宿のトイレ掃除をするようになった。 なんか気持ちがいいのだ。


6 月22 日

メシも食わず、ずっと寝ていた。

いろんな想いが浮かんでは消えてく。

損したとか得したとか、旅の間、そんなことばっか考えてる。

あのメシ屋ではボッタくられた?

あの客引きはどんくらいバックマージンがあんの?

地元の人はいくらで移動してんの?

ツーリストプライスは何割増し?

損とか得とか・・・おりゃ、いったいどこをゼロにして考えてるんや
ろね?

こんなにグルグル考えてんのは、誰や?

 
 「なんもせんでええ、放っておけ」

 自分のことも放っておこ。

前よりよくなろうとか、成長しようとか、幸せになろうとか、学ぼう
とか・・・。

長く旅して、いろんなことを知っててエラいのも、この「旅の世界」
でのことやんね。


 また、夜が明けて朝が来た。

 なんもせんでも、朝が来た。

 マーケットに行って、フランスパンを食う。




 カットカット村まで歩いて行く。

 モン族の村。

 滝があり、風が吹き、川が流れている。

 ビリヤードして、遊ぼうよ。

 滝の前で出会った子供に言われる。

 23日

 宿の部屋の掃除をする。

 ゴミを片付け、出る準備をする。

 市場へ行こうと宿を出る。





 待ち伏せていたようにモン族の女の子がいた。

 「ウソツキ!」という。

 ビリヤードに行こう。夜、市場にいるからね。

昨日、カットカット村で会った時に彼女はそんなことを言ってた。

 「ごめん、眠ってしまって行けなかった」と2重のウソをつく。

 本当に市場で待ってたのかもしれない。

 たぶん、そうだ。

サンドイッチを3つ買ってきて、彼女とその友達と3人で道端に座っ
て食べる。

 「これ、いくらで買ったの?」と尋ねる彼女。

 「2000ドンで買ったよ」

 いくら値切っても2000ドンだった。

宿の主人いわく、地元の価格は1500ドンらしい。

 「へぇ、私たちも2000ドンで買うよ」

 ベトナムでは、モン族は外国人価格で買い物するんだ・・・。

 「アリガトウ」 2人とも日本語で言う。

 ごめんね、ビリヤードできなくて。

 モン族の物売りの女性たちにも顔見知りができて、名前で呼んでくる
人もいる。

 「コレ、カッテ〜。コレ、カッテ〜。」

 「オオキナクリノキノシタデー♪」

 誰かが教えたんだ。

 思わず彼女たちから口琴を買ってしまう。

 ここは過ごしやすいし、みんな笑顔がいいよ。

 部屋の枕、布団を干し、トイレの掃除をする。

北京の京華飯店以来、泊まった宿のトイレ掃除をするようになった。

なんか気持ちがいいのだ。

 サパはいい町だった。



 14:30

 ラオカイまで降りる。

サパは高地で涼しかったがここは暑い。

 カフェでビールを飲む。

 外国人用と地元客用と2種類のメニューがある。

 文字だけでなく、価格もきちんと変えてある。

 ざっと2倍くらいの差がついている。

 金持ち外国人旅行者からは、取れるだけ取ろうってことか?

 メニューの表紙には「旅のガイドブックに推薦文を書いてください」
と。

 残念ですが、推薦できません。

 カフェにあるPCでネット。

 OSがXPなので、日本語が読めると期待したんだが、大間違い。

 Microsoft のHPから、IMEのDLを試みるが通信速度が遅くて断念。

 意味のないネット使用料2000ドンを支払う。

 扇風機が回ってて涼しいなぁって思ってたが、ビールを飲み終わると
止められた。

 マイッタなぁ。。。

 18:30


ラオカイ駅からハノイへ向けて列車に乗り込む。

 ウソツキか・・・。

 出てゆくものと入ってくるもの。

 損とか得とか。

 そんな思考の世界にいるけど、列車はハノイへ向けて進んでる。

 6 月24 日

 AM5時、列車はハノイの駅に着く。

 それにしても車内の冷房効き過ぎだ。フリースを着込んでちょうどい
いくらい。

 新しい街に着くと、風景から自分が浮き上がっているように感じる。

 自分がどう動くか、どう感じているか、何が聴こえるか…それを観て
いる自分がいる。

 そんな感じが好きだ。

 駅前に集まっている、おそらく随分前から待ち構えていただろうバイ
クタクシーの客引き。

 彼らの中から、目が合ったライダーに身を任せる。

 宿まで連れてってくれ。

 『ハノイビクトリアホテル』名前はたいそうだが、安宿だ。

 朝食、インターネット1時間込みで$5 最上階の部屋。冷蔵庫もT
Vもシャワーも部屋にある。

 こりゃいい。

 バイクタクシーに乗り、ラオス大使館に行く。

首都にいる意味、大使館があるからヴィザ申請が容易。

 申請窓口「入国から30日間有効だ」とオフィサー。

 少し間をおいて、「キミは学生と書いているが、本当か?」

 「もちろん!」

 申請書には、student と記入した。

 「学びながら生きている」って意味において、生涯、学生だ。

 涼しいバイクタクシーの風に吹かれて、部屋に戻ると部屋は温室だっ
た。暑いというより、熱い。酷暑だ。

 床から天上から壁から熱気が上がってくる。エアコンはない。

 最上階のこの部屋は、人間の住める部屋ではない。

 1階のレセプションに降り、その旨を説明すると従業員一同、ハラを
抱えて大ウケ。大爆笑される。

 どうやら、そういう部屋に入れられたらしい。

 うううう・・・。

 鳴かぬなら、こっちが泣くぜ、ホトトギス

 シャワールームのバケツを使い、床に水を撒く。

 濡れタオルを扇風機に掛ける。

 壁に水をぶっかける。

 冷蔵庫から氷を出す。

 当然、素っ裸になる。

 そして、ベッドに横になる・・・。

 ベッドのシーツが燃えるように熱いじゃねーか!!なんじゃ、この部
屋は!!

 水を3L飲んだ。

 水で生きるしかない。

 25日

 点けっぱなしのTV

 MTVが空しく絶賛放送中。

 ちっとも眠れない夜。

 朝、壁に手をあてる。熱くない。今のうちに休むしかない。

 ハノイ、おそるべし。

 フランスパンとオレンジジュースの朝食は意外にうまい。

 繁華街ホアンキエムを歩くが、地図もなんもない為、10分くらいと
聴いていた道のりに2時間も掛かり、死にそうになる。

 道路は網の目どころか、綾取りの紐のようになっていて、どうぞ迷っ
てください、という造りになっている。

 迷ってへこたれると、すかさずバイクタクシーが声を掛けてくる2重
に疲れるシステムが構築されていて便利だ。

 今日半日で1000回くらい言われた。

 「ハロー、モーターバイク?」

 エム湖の前で水を飲んでいると、子供が寄ってきて「ジュースを買っ
てくれ」という。

 「やだよ」

 「なんで買ってくれないのか?お前は金持ちだろ?」

 ハノイ、おそるべし。

 6月26日

 MTVを見る。

 こんな部屋でもTVと扇風機はある。

 OASISのSTAND BY MEのビデオクリップはいい。

 自分の生活をどこからか、ドッキリカメラのように隠し撮りしたい。

 TVの画面を通してみる自分はどんな感じか?

 そんな目でいつも自分を眺めていたい。

 TVを見ている自分は、自分をいつも応援してるからさ。

 TVの中で演じる自分を見て、「そこでそんなことをするか?」

 「素直になれよ」

 「食べすぎじゃない?」 「なんでそんな無理するか?」

 と声を掛ける。

 そんなことを考えてると、ぐっすり眠った。

 部屋の壁をヤモリが這う。

 洗面台がある。

 赤い蛇口からはお湯、青い蛇口からは水がでるようになっているはず
だが、その両方からお湯が出る。

 そんくらい暑いこの部屋にも慣れてきた。

 ホテルの従業員とも仲良くなった。

 「今日はあんまり壁は熱くないぜ!」というと大笑いする。

 昼間は寝て、午後3時から活動を始める。

 同じ宿の日本人と会い、アンカービールを飲む。

 群馬の出身で子供の頃は総理大臣になりたかったという豆腐屋のアル
バイトの青年。

 とてもいい味の青年。

 フランスパンを買ってきて、夕食に部屋で食べる。

 ハノイもいいじゃんね。

今日も生きてる、ありがとうございます。