中国雲南省麗江から大理へ アケミちゃんと再再会する。『随縁助楽』寧波の寺でみた言葉の意味が何となく分かる。


6月11日

 雨が降るので、宿で本を読んで過ごす。

 西村京太郎の十津川警部シリーズ。

 宿のPCのネットの接続がうまくいかないので、いろいろと試す。

 中国語のOSなので、試行錯誤しながら設定する。

 アケミちゃんからメール。

 麗江に来るとのこと。

お!北京、広州そして雲南で再会だ。

 宿をでてゆく日本人カップルと本の交換。

 風の又三郎を手放し、椎名誠がやってきた。

 今夜もベッドの上で白酒を飲んで寝る。

 外は雨。


 6月12日

 早起きして、庭に出るとおばあちゃんがもう起きている。

 宿をチェックアウトするオランダ人たちにこれからの旅の無事にとお
守りを渡している。

 夢を見た。

医療ミスで瀕死の状態に陥った。

 ベッドの中で薄れ逝く意識の中で湧き上がってきた感情は「もっと遊
んでいたいなぁ」

 実際、2年前のバイク事故で車と衝突して宙を舞ったとき、時間が止
まった。

 「どうする?」と誰かに訊かれた。

 どうしようかなぁ?

 「やっぱりもっと遊ぶ。だって楽しいもん」

 そう思った瞬間に時間が戻り、ものすごい激痛が襲ってきた。

 気が付いたときは、病院に搬送されていて、以後3ヶ月ベッド。
大腿骨骨幹部骨折。

右眼窩底骨折、その他諸々。

そんな2年前。

 それはさておき、中国ビザは20日までだ。

 ここの居心地があまりにもいいので、延長も考えている。

 どっちにしても今日は土曜、あんまり考えずに自分がどう動くかを観
てよう。

 おばあちゃんがお茶を入れてくれる。

 ここの宿は太陽熱のシャワー。

 昨日は雨だったので、「使用不可」の札が下げてあった。

 今朝は如何なものかと蛇口をひねるとぬるいお湯が出た。

ありがたい、ありがたい。十分だ。

 水圧が低いので掌で湯を集めて頭を洗う。

 ベッドに寝っころがって、椎名誠なんぞを読む。



 「夏休みにどっかで会おうぜ」

この前の電話で息子に言うと、彼は

 「ラジオ体操があるからいいよ」とのこと。

 あはははは。

全く生真面目がランドセルを背負ったような少年だ。

 そんなことを考えていると眠ってしまった。

 昼寝の後、宿を出て散歩してると道端でバッタリとユーイチとアケミ
に再会する。

 一緒に晩御飯を食べ、丸ごと世界遺産の街、麗江の夜を歩く。

 広場では納西族の踊り、当然のように輪に加えてもらって踊る。



 6月13日

 世界一周の関西人 タケシくんとインドの話をする中で、バラナシの
ラジャ、喧嘩番長フクゾウ氏などの話をする。

共通の知り合いもいるものだ。

 旅をする。

 打てる弾の数を増やすこと。

 握手する手を増やすこと。

 アケミと話すうちに、香港の重慶マンションのジョニーの話になる。

 どうやら俺らは同じ宿に時間を異にして泊まってたらしい。

 ジョニーが話してた「細身でチリジリ頭の日本人のオトコ」とはアケ
ミのことらしい。

 世の中狭いもんやわ。

 旅してる世界も狭いもんや。

 麗江古城を歩いて、鶏豆涼粉、杭州ショーロンポウを食べる。

 街中を流れる川の側で、納西族の衣装を着た女の子が金魚を売ってい
る。

 見ていると、路行く人びとはそれを買い求め、川へ流している。

 それに倣い、2匹買い、放流した。

 手桶には 永楽来福 と書いてあった。

 きっとまたその金魚は捕まえられて、売られるんだろけどね。

 夜は古城の夜景を日本から持ってきた万華鏡で見て、大笑いする。

 十分アガれるメンツやわ。


 タケシ、ユーイチ、アケミ、せっかく集まった4人、みんなで大理に
でも行くかぁ?ってことになる。

 旅は道連れじゃ。

 


 6月14日

 麗江の宿、香格居客棧をチェックアウト。老板とおばあちゃんにお別
れをする。

 香袋のお守りをくれた。

 バスで一人25元で沙坪のマーケットに行く。

白族のおばちゃんたちが商魂たくましく、いろんなものを売っている。

 食べ物や衣料に混じって、ボングも売ってる。

 また、バスに乗り、大理の宿へ。

 ユーイチはギターを弾き、アケミはずっと踊っている。

 4人で部屋をシェアする。

 中庭のあるわりとキレイな宿。

 隣には公安の建物。

 光がとてもキレイ。

 狭い部屋の中で、ギターの音、笑い声…すべての音が何重にも反響す
る。

 聴こえているものが聴こえ、見えているものが見える。

 そんだけのこと。

 大理は麗江よりも暖かく、半袖でもだいじょうぶ。

楽しい旅の仲間。

『随縁助楽』寧波の寺でみた言葉の意味が何となく分かる。

日本という籠の中から飛び出したつもりでいても、僕らは誰かの書いたシナリオの中で遊ばされているような感覚。

縁に随って、遊ばさせて頂いている。

ありがとうございます。