大理から昆明、そして河口へ。



15日

 朝からシャワーを浴びる。当然のごとく水シャワー。

 外に一人で朝飯を食いに出て、帰りにパンを買って帰る。

 部屋に戻るが、アケミもユーイチも死んだように眠っている。

 宇宙との一体感なんぞを感じながら、合宿2日目。

 レセプションで宿代を支払おうとするが、つり銭がないからまた来い
といわれる。

 ベッドの上に寝っころがってると、想いがひとりでに感覚の砂の上を
動き回る。

 滞りとまることを知らずに動き続ける。

 それをまた観察し、放っておく。

 想いは駆け巡り、拡がり、縮まり、高くなり、低くなり、そして帰る。

 目が覚めたユーイチ、アケミと話す。

 同じ感覚、リズム、言葉の中にいる。



 6月16日

 麗江といい大理といい、宿代が安く、飯がうまく、人の笑顔がいい。
 居心地が良すぎる。

 朝、アケミちゃんと砂鍋米銭を食べる。

 タケシやユーイチは死んだように寝ている。

 彼らのイビキに合わせて体を動かしたり、踊ったり…。

 ただそんな一日。

 もう大理も十分やなぁと思う。

 アケミは相変わらず笑っている。

 彼とは、北京で会い、広州でバッタリ再会し、また麗江で会った。

 また日本で会おう!



 17日

 朝、寝ぼけ眼でトイレに行くと、公安がいたりする。

なんじゃこの宿は?!!

 隣の建物が公安なのは知っていたが、トイレが共有なんて聞いてない
ぞ。

 7 : 30に宿を出て、バスターミナルへ行く。

 ユーイチとアケミにサヨナラ。

 山の中の悪路を10時間バスに揺られて、昆明に帰る。

 市場や棚田が見える車窓からの風景は実に実に美しかったが、それに
も限度がある。

 片側交互通行で30分、工事車両との離合で30分・・・。

 工事しすぎ、渋滞しすぎ、路悪すぎ。

 朝食べた包子2ヶだけで一日をしのいだ。

 バスターミナルから63番のバスで茶花賓館へ。

 店で3元のビールを買い、ベッドの上で一気に飲み干す。

 ベッドに横になるといつの間にか眠りに落ちる。

 何もしていないのに、ひどく体に疲れを覚えた一日だった。

 香港へ一度出ているので、中国はノービザ状態。

 21日まで滞在できるはず、そろそろベトナムへ行こう!!



 18日

 外は雨。

 なにか夢を見たようだが憶えていない。

そんなことよりも蚊に刺されて痒い。

 8時半、昆明茶花をチェックアウト。

タケシが玄関まで見送ってくれる。

10日間も一緒にいた。

「ありがとう、楽しかった!」




 バスで国境の町、河口へ向かう。

 見渡す限りの棚田。川で遊ぶ子供たち。

上半身裸で働く道路工事員、いろんな風景が目の前を通りすぎてゆく。

 道端で売られている果物も、ジャックフルーツやバナナが多くなって
くる。

 20時、河口のバスターミナルに下りる。

 どうせ客引きがたくさん寄ってくるのだろうと気を引き締めていると、
あっけないほどほとんど誰も寄ってこない。

 そりゃなんか淋しいぞ。

 しかも宿もワカラン。

 あんまりやる気のなさそうな痩せた男が「宿はあるのか?」と聴いて
くる。

 「いや、なんも知らん。紹介してくれ。」

 不本意ながら、客引きにこちらからお願いする。

夜だしねぇ・・・。

 彼の名は 王という。本当かどうかはワカラン。

初めはこの宿の経営者だと言っていたが、話の辻褄が合わないことばかりで、明らかにウソ。

 40元でシングルという。

昆明とかに比べると安いが、ここの相場からするときっと高いんだろうなぁ。

 なんとか交渉して、30元になる。

TV、トイレ、シャワー付ならまぁよかろう。

 王浩と一緒に・・・というより連れてこられて、夕食を食べる。

 同じテーブルに着いた王はあたかも自分の夕食のようにガツガツと食
べ始めた。

 案の定、勘定を割る様子はない。

客引きどころかタカリじゃねぇーか、こいつ・・・。

 仕方がないから、「ごちそうさまでした」という日本語を教えて、10回くらい練習してもらう。

 食べ終わると今度は自分の部屋に来いという。


 洋品店の2階の狭い部屋に連行される。

 道すがら、知り合いに会う旅に「日本朋友」と紹介され、握手される。
 
部屋にはVCDがあり、日本語の曲を聴かせてやるよ、と掛けてくれ
たのは、バリバリ中国語のテレサ・テンだった。

 「俺たちは同じ 豚男だな」

 生まれ年や出身地を話した後におもむろに王が言う。

 中国では十二支の「亥」をブタというらしい。

 彼はまた明日の朝、来るという。

 名刺をくれた。

 「王浩 職業:英語のツアーガイド 公安認定」

 この名刺はペロンペロンの薄紙の自作だ。英語ガイドってわりには
ちっとも喋れない。

 部屋に帰るよと言って、王の家を辞す。

 中国ベトナム国境が目の前。

 深夜だが見てみよーと、歩いて国境に行くが銃を持った兵士に帰れと
いわれて素直に帰る。

 いよいよベトナムやわ。