ホイアン〜ニャチャン〜サイゴン  疑って、ごめんなさい。 あなたの親切は、忘れません。


 7 月16 日

 夜中の2 時に眼が覚めて、洗濯物を取り込む。

 この旅でたった一枚のタオルは、昨年の家族旅行で行った山陰の温泉
旅館のタオル。

 生地が薄くて、ペラペラだから吸水も良いし、乾きも早い。

出国時には真っ白だったけども、もう薄汚れてる。

 でも、これがいい。

これが好き。

だって、これしかないもん!

 宿のTV、NHKBSでは新潟の大雨のニュースを繰り返し放送して
いる。

 復旧に向けて、学生や主婦のボランティアが働いているとのこと。

 日本!!

 横綱朝青龍、二連敗。

韓国ブームに沸く日本。

 ベトナムにいて、日本のことを想う。

 日中は、2ドルのツアーに参加してミーソン遺跡に行く。

観光なんて久々だ。

 ミーソンは遠すぎて、自力で行くよりもツアーが楽そうだ。

 十中八九、疲れるだろうと予想していたが、その通りだった。

 時間を決められて、ガイドについて回るのはやはり苦手だ。

 興味のあるところには一日中だって座ってたいし、そうでないところ
につきあうのは退屈だもん。

 すんごい疲れて宿に帰り、ユウジからもらった本を読んで横になる。

 ミーソンの遺跡は全く印象に残ってないけど、ガイドさんが説明して
くれたエピソードが心に残った。

 ミーソンの遺跡は欠落、欠損が多い。

 これはなにも古代の戦争の傷跡ではない。

 近代、ここの神殿を発見したフランス人が、手がたくさんあり、怖い
表情をした神様たちの石造を見て、「こんなものが神様であるはずがな
い!!」と首を刎ねて、手を切り落としたのだ。

 唯一神教の「正しさ」を垣間見たような気がした。



 さーて、サイゴンに行こうかなぁ。

 今からバスに飛び乗っても、24 時間くらいかぁ。

 カンボジア領事館は翌々日まで開かないし、ニャチャンのビーチにで
も行くかなぁ。

 屋台でブンボーを食べ、生ビール屋の看板娘2人にお別れを言いに行
く。

 ホイアンは過ごしやすい街だった。

 バスは18時半発。

 すぐに眠る。

 眼が覚めると10時27分。なんじゃこりゃーっ!!熟睡しとります
がな。。。

 旅用に出来ている体に感謝する。

 食べ物と眠りと気持ちで自分の体を保つ。

 この体はどこからどこまでが、自分のものなのだろうか?

 空気、食べ物、意識・・・。



 7月17日

 バスにずっと乗っている。

何もしていないが、バスは進む。

 行き先は決まっているので、何を考えてもそこに進む。

 ベトナムを南下するバスに乗っているので、北上することはない。

 バスの窓から見える星、朝日、街の明かり。いろんなことを思い出し
た。

 6時過ぎ、ニャチャンに着いた。

 降りた。

 このまま、サイゴンに向かうのはキツい。

 ハンカフェのオフィスに行き、明日の夜の便を予約した。

 5ドルで宿を取る。

繁華街の中のホテルのエアコンの故障したシャワー付のシングル。

 シャワーを浴び、ホイアンで買ったパンと水で朝食。

 ニャチャンのビーチを歩く。

 子供が遊び、犬が泳いでいる。

英語が堪能なベトナム人教師としばらく話をする。

 しばらく浜を歩く。

 ヤシの木、風、潮の香り、太陽の光。

 河口付近の橋を歩いて渡るころには、心身ともにフラフラ。

 屋台のジュース屋に立ち止まると、向かいの店の2階から「トモダチ!」と叫ぶ男。

 笑顔を返す。

 サトウキビを搾ったジュースを飲んでるとさっきの男が降りてくる。

 さかんに日本に友達がいることをアピール。アドレス帳を見せてくれ
る。

 一緒に昼ごはんを食べようといわれる。

 COMで昼食。

 ベトナムで食べたものの中で最もうまい昼食だった。

 お寺、遺跡、いろんなところをバイクで案内してくれた。

 そして、市内の友達めぐりになり、何軒も周った。

近所の人や友達を紹介してくれて、家族のように輪に加えてくれた。

 最後に友人と3人で居酒屋に行く。

 さぁ、来たぞ。ここで支払いをさせられる運命になるんだ。

 ものすごいボッタくられるストーリーだ!!

勘定はこっちにくるぞ。

 と心の中で覚悟した。

 けれど、払ってくれたのは全部、彼だった。

 ・・・。

疑って、ごめんなさい。

旅先だとどうしても完全にフリーにはなれない。

どうしても疑いの目で人を見てしまっている。

あなたの親切は、忘れません。

またおいで!と言ってくれた。

ベトナム・・・。



 18日

 海から真っ赤な太陽が湧き出てくる。ニャチャンの砂浜。

 そこにずっと座ってた、5時30分。

 水面にその赤が道を作っている。

小さな一つ一つの波も海と離れていない。

 雨の日も曇りの日も、太陽は昇ってる。

 すげーなぁ。

 その中に人間として、そこにいることって、なんかうれしいなぁ。

 すげーなぁ。

 その一部として、風景の一部として、自然の中、そこにおるのって素
敵やなぁ。

 散歩して、お粥を食べる。

 宿をチェックアウトして、メールを読む。

 家族がデンパサールに来る。27日にフライトらしい。

 久々に会える。

 19時28分 サイゴンに着く。

 4ドルでシングルの部屋を取る。この街は大都会だ・・・。

 バスに揺られながら、想ったこと。

 夢って、これから叶えるべき何かなんだろうか?

 今、この瞬間って実は夢のような時間だ。

 夢のように楽しい、エキサイティングな時間を過ごしてる今がずっと
続けば、この今はスゲー♪

 夢が叶ってる、叶いつつあるこのプロセス、ってか全部、夢じゃねぇ
の?

 部屋のベッドの上で世界地図を広げる。

 27日にバリ島のデンパサールかぁ・・・。

 時間と地図とニラメッコ。

 飛ぶしかねぇーな、こりゃ。

 どこから飛ぶかねぇ。

 ハノイに着いたとき、こんな暑くてうっとおしい国はさっさと通過し
よーって思ったけど、はや一ヶ月が過ぎた。

 まぁ、その時そのときの感情ってのもあるさ。

 さざ波も立つ。感じたときには感じたままに。

 感じるにまかせていよう。

 波は立っても、海はそこにある。