宿探し、タクシー拾いも家族の為だと気合が入る、自分だけだとどーでもいい。ずっとずっと土曜の夜の気分で行こう。

 9日

 起きなくてもいいのに、6時半には起きる。

空は雲っているから朝日は見えないと知りながら浜へ行き、予想通りの灰色の曇天を拝む。

 宿においてある本を漁ると伊集院静のギャンブルエッセーだったりな
んかして、これもまたそこはかとなくいいものであるな。

 ところで、そこはかってなんだ?

底墓か?

 息子が起きてきて、お腹すいたという。

子供のことがかわいいなぁと思う。

嫁にも声を掛けるが全く反応がないので2人で手をつないで外に出る。

 男はつらいのぉ〜、息子よ。

この息子との友情に似た仲間意識はうれしいな。

旅の面白さを彼は記憶するだろうか?

 お昼はビーチでナシゴレンを食べる。

3時から、みんなでグラスボートに乗る。いろんな魚を観る。んで、
バナナボートにも乗る。

娘は疲れて寝てしまい、ライフジャケットに包んでそのままに。


それから乗りあいバスに乗り、レギャンのビーチで息子とサンゴを
拾った。

 屋台でテイクアウトのナシゴレンを買って帰って、宿の部屋でみんな
で食べる。

娘のために青いワンピースを買った。とても似合う。

 明日はみんなとお別れだ。

 「淋しい?」って7歳の息子に訊いてみた。

 「はぁ?淋しいよ!」

 ちょっと泣けた。


 10日

 生きててよかったと思える夜もあるものだ。

 6時半に息子に起こされる。

二人でビーチを散歩しながら。

クタ行きのペモを探す。宿探し、タクシー拾いも家族の為だと気合が入る、自分だけだとどーでもいい。

 今日、家族と別れ、また一人になる。どうしてまた一人になるんだろ
う?

 13:30 家族を空港まで見送ってきた。泣いちゃった。

 また一人になった。

2人の子供を抱いた、2週間楽しかった。

 「いっぱいありがと」 娘が空港で言う。

子供って、7歳までのかわいさで一生分の親孝行してる。

 また一人旅が始まっちゃった。

 クタの街に戻る。

シークレットガーデンの奥に6万ルピアの激安宿を見つけた。

一人ならこれでいい。

 藤沢周平の小説を読む。

 文字は目で追ってるけど、頭に入ってこない。

 腑抜けになるってのは、こういうことなんだろう。

 「あなたはホントに私のことが好きなのね、呆れるわ」

 嫁の言葉。

 空港で見送るとき、7歳の息子が投げキッスをした。

 こいつ、分かってるのか?

 ナイスな奴だ、友達になってやるよ。

 11日

一人旅もいいが、女房こどもと一緒に転々と旅をするのもいいものだ。

 子供とジャレあって遊ぶのなんて、最高の時間だ。

 また一人になって、最安値の宿に身分を落とす。

 一向に止まることのない水洗トイレの水の音を聴いている。

 コンビニで飲料水、ビール、アスピリンを買ってくる。

ぬるくなったビンタンビールを宿の部屋で一人、飲む。

伊集院静のエッセイを読んでると、ドウシヨウモナイ人間が大好きになった。

 おりゃ、ホントにドーシヨウモナイ人間だ。

 1週間のうち、どの曜日が好きかなぁ〜。

土曜日がいい。それも夜。

次の日が日曜日だってのがいい。

気持ちに余裕がある。

逆に日曜の夕方は嫌い。

笑点のオープニング曲なんて聴くとウンザリする。

 ずっとずっと土曜の夜の気分で行こう。

クタの繁華街を宛てもなく徘徊する。


 ガンポピーズの路地を歩いていると、地元の人たちから一緒に飲もう
ぜと声を掛けられる。

 コンビニでパンを買って、宿に戻る。

 あ〜ぁ、また一人になっちゃったよ。