「お前に良いペチャと悪いペチャの見分け方を教えてやる」とのこと。『昼間っから寝てる奴は良い奴だ』 ジョグジャカルタ



11日

 よく寝た。

何度か目が醒めたが、よく眠った。

今日はデンパサールまで行く。なんか腑抜けだ。

 宿を出て、ウブンまで行く。

そこのバスターミナルへ行くと目の前にいたバスにすぐに乗せられた。

行き先も告げたか告げぬか分からぬまま。

腑抜けだ。

バスのまんまフェリーに乗る。

どうやらバリ島は出るようだ。サイラナ、バリ。

時計をジャワ時間にする。

夕食付のバスみたいで得した気分。ラッキー!!

早朝からバスに揺られてて、今、21 時20 分 スラバヤのバスターミナ
ルに降ろされた。

ジョグジャカルタまでの約束で買ったチケットだが、
いきなり放り出されて、この人は途方に暮れている。

乗換えをしなくてはいけないが、ちっともラチがあかないし、誰も助けてくれない。

真夜中の知らない町に置き去りかよ。

すんげぇ、不安の塊。

だけど、一方で開き直ってる。

しゃーないもんね。




浮いたり沈んだり、旅だねぇ。

 放っておいても、どうにもならないときには自分で動くしかない。

 動くしかねぇからな。動いてやるよ。

 その辺のバスのおっさんにチケットを見せて交渉する。

 9 万5 千ルピアを払え、これはスラバヤまでのチケットだと言い、チ
ケットを破る。え?マジ?んじゃシャーナイからと払う。

すると、チケットに「1」を付け加え、さらに10 万ルピアだという。

アリエナイ。

 断固として拒否。

こ・こいつ、トンデモない奴だ。ヤラレタ。

 実にうっとおしい。

呆れる。ダマサる自分にハラが立つ。

くっそー。ナメられたもんだ。

おそらくはあのチケットのままでジョグジャカルタまで行けたはずだ。

バスの中には外国人はいない。誰も知らない、どこに行くのか分から
ないバスの中で気を張ってる。

 エアコンが効きすぎ。

蚊がいるから、フリースを着る。ベトナムの列車以来の緊張感。

 一人旅の感覚がだんだんと戻ってきた。

 一人なんだ。
 一人なんだ。
 バスに揺られて眠ってると、起きろといわれた。

 荷物を持たされて、バスを降ろされた。他のバスが後方から来る。な
にやら交渉してる。

 決裂。

 また同じバスに乗る。意味が分からん!

 真夜中、ソロという街のターミナルでまた下ろされる。

 5000 ルピアを渡され、これで自分でジョグジャカルタに行けと告げられる。


 は?

 インドネシア!!!すごい!!

 やられっぱなしじゃん!!!!!!

 重たい荷物を背負って、バスのヒッチハイク

 散々探して、見つけたジョグジャ行きのバス、どんなに交渉しても
6000 ルピアだった。

 負けっぱなしの青春!


 12 日

 午前5 時40 分 ジョグジャカルタのメトロホテルに入る。長い道のりだった。宿の部屋の鏡に自分を写す。ひどい顔だ。思わず笑ってしまった。

 腕時計Gショックが止まってる。電波時計でソーラーでショックレジ
ストなのに・・・。

 肌寒いのでファンを止めて、眠りに落ちる。

 目が醒めても、時計は動かない。

イージーライダーのように時計を放り投げて進めってことか?できねーってば。

 昨夜のバスのドライバーに「お前はどこの国のもんだ?フィリピン
か?」といわれた。かなり日焼けしてるな、この人は。


 中央郵便局を探して、日本に絵葉書を送る。


 出ようとすると職員の人に呼び止められた。

「お前に良いペチャと悪いペチャの見分け方を教えてやる」とのこと。

 ヒマなので聴いてみる。

 ちなみに「ペチャ」とは、人力車。

 悪いペチャは、声を掛けてきて寄ってくる。

そして目的地に連れてゆく振りをして御土産物屋に連れて行って、コミッションを取る。

 良いペチャは、昼間っから道端で寝ていて、こちらから声を掛けない
と起きないそうだ。

インドネシアの格言にするよ。

『昼間っから寝てる奴は良い奴だ』


 マタハリデパートで涼んで、マリオボロを歩く。

NTVの取材のきれいなおねえさんに会う。

インドネシアの旅紀行を放送するらしい。

ナレーションは本上まなみさんがするってさ。

もちろん本人はいないが、そんなことよりこのおねえさんとお友達になって、一緒にご飯でもと思ったが、忙しそうにどっかに行ってしもうた。

 しゃーないので、大通りをぶらぶら歩く。

 ソノブドヨに行き、ワヤンクリという伝統的な影絵を観る。

それはそれは重要な伝統的なものらしい。

これを観ずにインドネシアに来たということなかれ。。。

 案の定、死ぬほど退屈なので途中で抜け出る。

その辺で寝ていたペチャのおっさんに声を掛け、宿に帰る。本を読みながら寝る。


 13 日

AM4:30に起きる。

コーランが聴こえる。何をするにしても「今、子供と一緒だったら・・・」と考える。屋台で食べるとき、歩くとき。

一人ってことは、感じたことを伝える相手がいないってことなんだね。

ボロブドゥール遺跡に行く。

アンコールワットよりも穏やかで優しい。

 朝日に照らされて、岩肌がしっとりしていて、美しい。

 腕時計が壊れて使えないので、時間が分からない。

 2人の日本人に会う。

シンガポールで買い物をしてきたという。

リーバイスのジーンズとオークリーのサングラスを買ったそうだ。

あほなんじゃないかと思った。

 本当に心の底から「ちっとも似合ってない」と感じた。

もっとナチュラルなものの方が似合うのに。

 カンボジアで出会ったリュウイチくんは、ちっとも高価なものを身に
着けていないのに、全てがすべて似合っていた。

 なんでだろね?


 宿の従業員のヤヤンとリッキーと飯を食いに行く。

 宿をチェックアウトして、駅へ向かう。ヤヤンがバイクで送ってくれ
た。
 ジョグジャカルタの駅で一人、列車を待つ。もう出発時刻を過ぎてる
ぞ。
 ここが始発駅なのに・・・。

 あ!大問題発覚!チケットをぼんやり眺める。

そして、よく見る。日付が昨日になってる。

 チクショー!あのオヤジ!!

 こうなりゃヤケだ。

何食わぬ顔をして、改札を通り、列車に乗る。

 列車の中、当然の如く、予約の席には「今日の乗客」がいる。その横
で寝た振りをする。

 ドキドキしながら車掌の検札を受ける。

 なにごともなく、車掌さんは行っちゃった。

いい加減でテキトーなインドネシア

 アリガタイ、アリガタイ。