そうだ、この世は MATRIX !! OK ! It`s free  パキスタンビザ取得 ジャカルタ〜シンガポール 

 14 日

 列車の中、時計がないので今が何時なのか分からない。

壊れないだろうと日本で買ってきた Gーショックなのに。

おそらくは午前7 時くらいだろう。

 ジャカルタのガンビル駅に着く。

昨夜の車内食のパンを食べる。

無効なはずの一日前の切符で乗ったにも関わらず、車内食の配布まであって、アリガタイ、アリガタイ。


 駅の構内にある旅行社に行き、シンガポール行きのチケットを探す。

そこのオフィスにはまだ国際線担当者がいないとのことで、バジャイに
乗って、ジャランジャクサに行く。

 エージェンシー ロベルトゥーンクンチャナでシンガポールまでのフ
ライトのチケットの最安値のものをゲット。

明日の早朝便。そこの目の前にあった宿、ジョディホテルにチェックインする。




 4 万ルピーとかなり安い。

レセプションにいる従業員が、バックパックにぶら下がった太鼓を叩いてくる。

すぐに仲良くなれる魔法の道具だ。

 水のシャワーを浴びて、外を歩く。インドネシアの首都、ジャカルタ
を当所なく歩く。排気ガス、ゴミ、悪臭。

 昨夜はほとんど寝ていない。屋台でミーアヤムを食べ宿で少し寝る。

 目覚めて、近所のデパートを歩く。

首都らしく洗練された品々。用事がない。

 マクドナルドのメニューにもライスがあり、みんな手で食べている。

 トイレの横にはお祈りのスペースも用意されている。

 同じ地球の上で息をする、いろんな人々。

 同じ時間を生きる人たち。

 今、ここにいる。

 あっちも、こっちもない。

 ビールを買って、宿に帰る。

 今は何時だ?

 明日は時計を買おうかなぁ。

 マクドナルドの店内、広い敷地にたくさんの人いた。子供連れ、カッ
プル、待ち合わせ。

無機質で鮮やかな原色のプラスティックのテーブル、椅子。高音と低
音の効いたドンシャリなスピーカーから流れ出るBGM。

 ふと自分だけが風景から浮き上がり、全てのものがこのシーンのため
の作り物、セットされたもののように感じた。

 その刹那、目の前の席に腰を下ろした男がいた。

 その男のTシャツの胸には大きく MATRIX と描いてあった。

そうだ、この世は MATRIX !!


 15 日

 夜半、目が醒める。

時計が壊れてるので、今の時間が分からない。

部屋を出て、食堂の壁掛け時計を見る。

 2 時30 分だ。あと2 時間は寝れる。

インドネシア ジャカルタのジョディホテル 17 号室の壁の落書き。

 ‘ a man without ambition is like a bird without wings `

 全てのことには意味がある。

 ならばそこに自分をさしはさむ余地があるのかなぁ?

 今度はいったいどこで誰と会うのだろう?

 流れに身を任せよう。

 11 時、シンガポール チャンギ国際空港に降り立つ。

MRTに乗り、市内へ。

 ベンクーレンストリートに降り、いつもの安宿ペオニーへ。

汚い部屋と無愛想なオヤジは健在でホッとする。

でも、この宿がなくなるのも時間の問題のような気がする。

シンガポールの現状にそぐわない設備と雰囲気の宿だが、ここが居心
地がいい。

今、泊まってるのはタイ人の女性とオカマばかり。

日本人、西洋人はいない。

 廊下に炊飯器やカセットコンロを置いて、自炊してる。
たくましい。

 近所の屋台でメシを食い、タイ製の腕時計を買う。





 16日

 安い腕時計。

軽くて薄くてお気に入り。

しかも結構多機能。

 シンガポール秋葉原のような街でデジカメ用のコンパクトフラッ
シュを買った。

粘って値切ると$10(シンガポールドル)安くなった。

日本円にして660円。

 ベトナムでは一日の生活費以上の金額だ。

物価の高い国で節約するってのはすごいなぁ。

つーことは、日本で節約するってことは世界でイチバンすげーことなんだ。

 チベットカンボジアでケチった今まではいったいなんだったんだ?

 それにしてもここ、シンガポールは物価が高い。

 8時前に崩れかけそうなオカマ宿を出て、探すこと2時間。

やっとパキスタン領事館を見つけた。

たくさんの人がすでに並んでいる。

やっと順番になり、「え〜っとビザを発給して欲しいんですが・・・」
と言う。

受付のおっさんは、Rのキツイ英語を使いながら、

「ここで発給するのはビジネスビザ。日本人向けのビザはここでは発給していない。どうしても必要なら、日本大使館からの推薦レターを持っておいで。」

と丁重に断ってきた。そりゃ、そうだ。

 でも、日本大使館に行っても、ビジネスであることの証明なんて取れそうもないし・・・。困った顔をしてると、受付のおっさんが「直接、ボスに話してみるか?」と。

 ナイスなオヤジ、いやジェントルマンじゃねぇか。

 そして、彼宛にいかに自分がパキスタンという国に興味があるか、日
本とパキスタンの交流は草の根から旅人から始まる・・・などなど思い
つくことの限りを書きなぐり、渡した。

 そしたら、なんと受理してくれた。

 申請書の記入も全て手伝ってくれた。

ガイドブックなんぞ一切ないので、入境地や現地の宿泊予定地など分からない。

受付のジェントルマンは「俺にまかせとけ」と適当な地名とホテルの名前を書いてくれた。

ありがとうございます!!神様ですか?あなたは??

 「で?いくら?」

  OK ! It`s free

 無料でしかも翌日発給だ。

すげーうれしい。パキスタン、大好き!!!

これでパキスタンへの道ができた!!

領事館を出て、街を徘徊する。初めての一人旅もシンガポールだった。

あの時もオリンピックを開催していた。12年前のことだ。

 MRTを使って、ラッフルズプレイスまで行き、マーライオンパーク
まで南に歩く。


 勢いよく水を噴出し、今まで見たうちで最も元気なマーライオンだっ
た。

 世界3大ガッカリの一つなんて言わせないぞ!とばかりに。

周辺は整備されていて、12年前よりもおしゃれな街になっていた。

 ひさしぶりにエスカレーターに乗った気がした。

この国のエスカレーターは怖いほどに速い。

しかもそのエスカレーターを足早に上って行く人もいる。

 ここは日本に近い。

シンガポールを嫌うバックパッカーが多い。

他のアジアの国の中では、かなり異質だ。

旅行者目当てに群がる客引きも、暑くて路上で寝てる野良犬もいない。

ホーカーズと呼ばれる屋台街もなにかプラスチックだ。

だが、嫌いじゃない。

今日は、パキスタン領事館の話の分かる紳士に感謝!!

旅は続く。