朝日、波、海、魚、子供。僕らはみんな生きている♪特別なところはどこにもないし、特別でないとこ ろもどこにもない。

 2日

 あの手この手で売り込みを掛けてくる宿よりも、何にもしない、何に
も言わない、ただ笑顔でおいしい食事を出してくれるこの宿に好感を覚
え、またここに来たいと思う。

 どうせお金を使うならば、ここでと思う。

あれこれしようとしないことで、そうできてしまうことってあるんだ。

 なんもせんでええんや、やっぱり。

 ただただ、ぼーっとして、目の前に起こることに素直にそのまま、体
が動くままにしてりゃええんやなぁ。

 今日は島の北部の村 ロビナに行く。

家族バックパッカー、バリを往く。

1泊12万ルピア。

食事はナシチャンプルで1万ルピア。

格安家族旅行、幸せ、幸せ。

 11時のバスでロビナへ向かう。

2時間半と聞いていたが、余裕で4時間掛かった。

途中、棚田(ライステラス)を眺めながら山道を蛇行してゆく。

山口の山間部では当たり前の景色だが、世界有数の観光地の景観だから驚きだ。


 明日の朝、沖までイルカを観にゆくことにする。

 隣町シンガラジャまで往復8kmを散歩する。

 ネットカフェを探すが、見つからず。

 頭のみつあみを外す。もう限界。大量の髪の毛が抜けた。

 3日

 イルカウォッチングに出る。

夜明け前に部屋を出て、眠ったままの娘を抱っこして、バイクの後ろ
に乗る。

 浜辺で出会った日本人の2人に「スラマパギ」と挨拶される。

 「あ、日本人ですけど・・・」

 朝日がすごい!

 イルカも見えた。

 3時間、船に揺られ、波を被り、ぐったり。

 浅瀬には魚が泳ぐ。海の底が見えるほど、透き通ってる。

イルカも魚も波も空も船も一つ。

 首を回したり、目ん玉を左右にやったり・・・それだけのこと。

 観ようとしたものが観える。


 
宿に戻り、朝食。「おなかすいた」と息子。

オーダーしてから1時間掛かって、ミーゴレンとナシゴレン

 波の音が眠気を誘う。

 Newsweekをベッドの上で読み、子供とトランプをする。

 息子の夏休みの宿題の絵日記を手伝いながら、ベッドの上。

 カタカナの練習。

 シ ツ ン ソ 、日本語は難しいね。 

お を わ は 。


 夕食は地元の店にロブスターを食べに行く。

帰りにペモドライバーにテイクアウトしたナシゴレンを手渡す。

プライズをとても喜んでくれた。

 してあげることもない、してもらうこともない。

 喜んでもらえることは嬉しい。

自分が喜ぶことは、うれしい。

 いつも水平線のように、波のように。



 4日

 朝5時、遠くに鶏の声、近くに虫の声。

 昨夜の飲み残しのビンタンビールが転がってる。

バリ島にもムスリムがいるのかコーランが聞こえてきた。

 ベッドの上で奥さんに日本から持ってきてもらった『地球の歩き方 
インドネシア』を開く。

 ずっとアジアにいるつもりでいたが、ここはオーストラリアにすごく
近い。

シンガポールとそれほど距離が変らないところにダーウィンがある。

 今日は移動なので、パッキングをする。

サンダルを入れていたセブンイレブンの袋がどこかにいっちゃった。

 中国広州のセブンイレブンの買い物袋。

 持ち続けていると、ゴミ袋にまで固執し、執着する自我に思わず笑っ
てしまった。

旅の中の毎日では、物を本当に大切にする。

ビニル袋ひとつただではない。

失くしてしまったビニル袋を「失った」と思う自分。


 ウブドで出会った女の子たちがフラワーエッセンスやパワーストーン
の話をしてたので、「バリってそういう所?」と尋ねた。

 すると「あなたはどう感じる?」と訊かれた。

 そうだよね。どう感じるか、それだけ。

 聖地でも凡地でも、特別なところはどこにもないし、特別でないとこ
ろもどこにもない。



 ロビナからトゥランベンへ向かう車の中で娘が大声で歌いだした。

 「僕らはみんな生きている♪生きているから嬉しんだ♪僕らはみんな生きている♪生きているから悲しんだ♪」

 あぁ、つまりは、まぁ、そういうことのようですな。

コテージの玄関に椅子を置き、奥さんの額に手を当て、ヒーリングす
る。

 移動続きで疲れちゃったね。

 明日の窓を広く開けて、全てのことを受け容れよう。

 心の中でどこかで聴いた歌が聴こえてくる。