あんな感じになりたいなぁと思っていたようになっていることに気が付いた。


27日

バリ島の朝。

ガンポピーズの安宿だが、部屋の目の前にはプールが広がっている。

今朝は小雨がパラついてて、プールの水面が揺れている。

パンと紅茶の朝食を済ませて散歩する。

小道を気ままに歩く。

観光地でリゾート地なので、それなりの身なりをした人が多い。

デジカメがまた壊れた。

チベットで壊れ、中国で復調。

その間、よく動いてくれたものだ。

ビーチのすぐそばの写真店で Canon のカメラを買った。

大きな買い物だが、仕方がない。

この金額が何日分の生活費になるのかと計算しようとしたが、やめた。

そんなことには意味がない。

天気がよくなってきた。

バリ島っぽい光が空から差し込んでくる。

今、1時20分、家族を空港に迎えに行く。

なんか不思議な感じ。

到着ゲートで待つ。

15時過ぎ、1時間近く待ってやっと出てくる。

子供はすごく大きくなっていて、びっくりした。

たかだか5ヶ月なんだけど、大きくなっていた。

娘を抱っこしたが、彼女の体からは緊張感が伝わってきた。

それは異国に降り立ったためのものではなく、「この人は誰だろう?」
という感覚からくるものだった。

しばらくは喋りかけても、他人のように応えるだけだった。

髪も伸び、髭まで生やした父親・・・。

子供2人と奥さんを我が安宿に案内し、バリ島の小道を散歩する。

 息子を抱っこして歩く。

 ナシゴレン、ビーフンゴレンを4人で分けて食べる。

 子供とシャワーを浴びる。

シングルベッド2つを壁際に寄せて、子供が落ちないようにして寝床
を作る。

その上で、この5ヶ月の旅の話をする。

トランプで4人で遊んで寝る。

幸せとはこれだ。

 
 28日

バリ島で離散家族が再会。

息子は6時半には目覚めてそわそわしてる。

彼は日本では毎朝6時半に起きてラジオ体操に参加しているからだ。

夏休みにバリ島で会おうと言ったら、「ラジオ体操があるからなぁ・・・」と言い出したほど。

宿のプールの前で、一緒にラジオ体操をする。

もちろんここまで電波は届かないし、ラジオも持っていないので、自分
で歌う。

新しい朝が来た、希望の朝だ。喜びに胸を広げ、青空仰げ♪

 なんて素敵な歌なんだろう。

自分で歌いながら感動してもうた。

体操の第一は体が憶えていたが、第二はうろ覚えで、ええ加減なもん。

未だ寝てる嫁さんと娘を置いて、2人でビーチを散歩。

ポピーズ通りは、出勤のバイクでにぎわっている。

バナナの揚げ物を1000 ルピアで買い、食べながら歩く。

 宿まで戻るとみんな起きていて、一緒に朝食。

 子供とプールに飛び込む。

こんなに目の前にビーチがあるのに、プールで泳ぐのは、ビーチは波が高くて泳げないから。

 強い日差しと花の赤とプールの青。

子供は元気だ。

 夕食はバザールの浜でシーフード。

 夕日がきれいで、貝殻を拾う子供の姿が楽しそうだ。

 地元のミュージシャンが演奏しに来る。

 乾杯、上を向いて歩こう・・・日本人向けに。

 No woman no cry , Tears in heaven .

 帰ってシャワーを浴びて、トランプして寝る。

 一人の旅のときと、違う。

 歩く速度、方向。

 気ままな一人とは、わけが違う。

 家族で過ごす時間は、『家族で過ごす時間』だ。

 インドネシアのビール『ビンタン』を飲んで、眠る、が、1 時には目が醒めた。

 夜が長い。

 すげー長い。


 29日

 夜が長い。

 長い夜のせいで、酒が必要になるんだ。

小説や音楽、映画や恋愛もそう。

 夜が長いせいだ、きっと。

 電灯や天井のファンを点けっ放しで眠っていた。

消した途端、待ってましたとばかりに蚊が来襲する。

 中国の雲南で買っておいた蚊取り線香に火を入れる。

1つじゃ役不足で2つ点ける。

ベッドの上を2人の子供が転がり続ける。

いったいどんな夢を見ているのか?

 20歳の頃、マレーシアの東海岸を旅しているとき、幼い子供連れの
家族を見かけた。

 あんな家族になりたいなぁと想ったのを思い出した。

あんな感じになりたいなぁと思っていたようになっていることに気が付いた。

 今日も子供は早起き。

4人で朝食を摂る。ビーチまで歩く。

娘と砂浜に座って、地元のおばさんに髪の毛を三つ編みにしてもらう。

 髪も伸びたもんだ。

 今朝、観た夢。

 夢のなかでは高級ホテルに泊まっている。

 朝食前にチェックアウトしなければならない。

 でも、とってもお腹がすいている。

 おにぎりでも持たせてくれたら、うれしいなぁと想う。

 なぜか夢の中ではホテルマンも自分。

 高級ホテルのホテルマンのホスピタリティが試されるいいチャンスだ
と感じる。

そんな夢だった。

 表の想いとその奥にある想い。

 人に喜んでもらいたいという欲求と、人に喜ばれる存在でありたいと
いう欲求。

 人にしてもらったことを素直に喜ぶこと。

 本当に自分を喜ばせることは、きっと他人も喜ぶことなんだ。

子供たちと散歩して、サンバルやナシゴレンを食う。

大きくなっても子供たちはこんな時間のことを憶えていてくれるだろうか?